福岡部落史研究会
旧福岡部落史研究会(以下研究会と略)は、1974年9月、全国水平社元書記長であった故井元麟之氏の提唱に応え、郷土史家であった故松崎武俊、九州大学の故中村正夫・秀村選三・松下志朗、部落解放同盟福岡県連合会の高田繁、福岡県同和教育研究協議会の林力などの諸氏によって、福岡県で唯一の部落問題を中心とする調査・研究機関として設立されました。
スタート当初の研究会の活動は、故井元麟之氏や故松崎武俊氏らがリードし、部落史研究はもとより、「六曜」迷信、インドにおけるカースト制度にまで言及してきました。
- また、「楳屋文書」「毛利家文書」といった、部落内史料を駆使した研究や、井元麟之氏旧蔵史料・田中松月氏旧蔵史料の研究による水平運動史の解明、部落史研究だけではなく県内における同和教育運動についての研究も進めてきました(研究会の研究活動の成果と課題については、「部落解放史・ふくおか」100号で特集を参考)。
- その成果としての刊行物には、機関誌「部落解放史・ふくおか」、「全九州水平社機関紙"水平月報"復刻版」、「筑前国革座記録/全3巻」、「松原革会所文書」などの史料集の編纂・刊行や研究叢書・絵本などがあります。
- 近年の研究活動は、部落問題のみならず、インドにおけるカースト制、福岡における在日朝鮮人問題や国際社会と人権、多文化共生の課題などについても機関誌で特集を組むなど、その活動領域は一定の広がりをみせました。
そのような取り組みから、2000年度には、「第59回西日本文化賞/西日本新聞社主催」の社会文化部門を受賞しました。
研究会のこうした研究実績は、福岡における部落史研究を全国的な水準に押し上げ、その成果は福岡県内における部落史学習や社会啓発の現場においてもひろく活用され、学術的な研究の進展はもちろんのこと、全国的にも高く評価されてきました。
- このことは、やはり部落問題の解決が社会的にも不可欠であったことと軌を一にするものであったことは言うまでありません。
しかし、近年の人権問題における状況は、部落問題を中心課題としながらも、より多様化・国際化しており、そうしたニーズに応える社会的な責任を、より一層重要な課題として私たちは認識するようになってきました。